The Size Design Process

正反対のふたりから生まれたサイズ

前回の続きで、『nandakaを立ち上げたふたりの小さな対話集』の第二章をお送りします。

2. 正反対のふたりから生まれたサイズ

菊田
この一年で約30アイテムの商品を作り上げました。独自にS・M・L・XL・Wという5サイズを設計したところが推しポイントになっています。先にサイズのルールを定めて、その上で個別の商品をデザインしていきました。


サイズ設計はnandakaの製品を語る上で欠かせない要素です。

菊田
まず手紙における私と太誌さんの性質が正反対で。私は書き始めるとついつい長くなってしまって便箋3枚以上は使っちゃう人なんだけど、太誌さんは一言とかイラストだけのことが多かったよね。


そう、自分でも筆不精なほうだと思います。LINEでもスタンプを送るだけのことが多いからね。ただ一方で、美しい手紙を書く人への尊敬の念もずっと抱いていました。そしてそんな自分だからこそ、既存の形にとらわれずに文房具をデザインできるんじゃないかと考えたんです。同時に、たとえ自分の書く手紙が1行や2行で終わっても、申し訳なく感じる必要はない、自分が自信を持って出せればそれでいい、それが私なんだから、とも思いました。

菊田
そこで、「人が道具に合わせるのではなく、道具が人に合わせる」という考えでサイズから作ることにしました。


洋服だって、体格に合わせていろいろなサイズがあります。書く文字の量も、体格と同じように個人差があります。もちろん、同じ書き手でも気分や話題によってサイズを使い分けることは可能ですが。とにかく、まずは自分の中でしっくりくる寸法を作ることを心がけました。

菊田
サイズの検討中には、自然に出てくる文章の量を体格になぞらえて、お互いを「長いさん」「短いさん」って呼び合ってたよね。「長いさんはどう思う?」「短いさんはどうですか?」みたいな。とにかく、長いさんや短いさん、はたまたその中間の人たちに気持ちよく使ってもらえるようなラインナップを作ること。それを目標に進めていこうと。その中で、短いさん向けのカードのサイズが最初に決まりました。


日本では、一般的なグリーティングカードは、はがきサイズ(148×100mm)が基本で、洋2サイズ(162×114mm)の封筒にちょうど収まる大きさです。はがきサイズより小さいサイズとしては、A7サイズ(105×74mm)や名刺サイズ(91×55mm)が一般的に売られています。日本の郵便制度では140×90mmが最小サイズなので、これらの小さいカードと封筒の組み合わせでは郵便で送ることができないんですね。手渡しとか、プレゼントに添えるためのものだからです。そこで、日本の郵便で送れる最小サイズを基準にして作ったらどうだろう、と考えました。こうして生まれたのが、nandaka独自規格のSサイズ封筒とカード、そしてこの規格を採用したHome Seriesです。

封筒のサイズの一覧図1:封筒のサイズの一覧

カードのサイズの一覧図2:カードのサイズの一覧

菊田
Home Seriesが完成するまで、サイズに関しては太誌さんに一任していて、私は紙のセレクトや図案のアイデア出しなどに注力していました。でも出来上がった最初の一枚にメッセージを書いてみた時に、これは私のために作られたものだ!とウキウキして、その反応に自分が一番驚きました。思いがけず、長いさんの私としても「待ってました!」なサイズだったことに気がついて。


そこはいい意味で意外だった!

菊田
私みたいなついつい長くなっちゃう人には、お土産やプレゼントにちょこっと添えるだけの手紙を書く場合にめちゃおすすめしたい。いつもそういう場合には名刺サイズくらいのカードを使ってて。でも、お土産を見つけた時のエピソードとか、ちょっとした近況とかもせっかくだから書きたくなっちゃうのに、スペースが全然足りなくて諦めるってことが多かったんです。そこにきてこのSサイズのカードときたら!その時諦めていたようなことも書けるのがうれしくてうれしくて。


菊田さんはSサイズのことを名刺よりも広いサイズとして認識しているんだね。私がはがきよりも狭いサイズと認識しているのと対照的に。

菊田
捉え方は違うけれど、お互い今までにないサイズ感なのに、書いてみると実は欲していたものだったというのは共通しているよね。


そうそう。自分なりの使い方をハッキリと頭に思い浮かべることができるっていうことでもある。これはたぶん、大きさだけでなく縦横比も意識していることが奏功していると思います。Sサイズの場合、普通のはがきよりも少し細長くしました。

菊田
うん。最初見た時、スマホの画面みたいなサイズ感だなって思った。


またSからM、L、XLとサイズ展開する時に重視したのは、相似形にならないようにすることでした。市販の紙製品はサイズが大きくなっても縦横比が一定の相似形であることが多いですが、nandakaの場合は封筒の縦横差が一定(Wを除く)になるように設計したので、小さいほど細長く、大きいほど幅広くなります。LやXLでは長文でもゆったりとした感覚で書ける。サイズが一段階でも変われば確実にフィーリングも変わるようにしたかったのです。

便箋のサイズの一覧図3:便箋のサイズの一覧

菊田
カードのちょうど2倍の大きさが便箋なんですが、XLの便箋は便箋一枚で終わらせたい時にぴったりで重宝してる!長いさんの私としては、それなりに書く量は必要だけどさらっと簡潔に見せたいような場合にちょうどいいんだ。A4よりちょっと小さいくらいだよね?


そう。XLの便箋はA4(210×297mm)より少し小さくて、2つに折るとXLのカードと同じ。3つに折るとWのカードと同じになるので、XLの便箋はWの封筒にも入れられます。こんな感じで5つのサイズを設計しました。

菊田
各サイズのフィーリングの違いを明確に出せるように、グラフィックのコンセプトはすべて変えて5つのサイズの代表となる商品を作りました。隣り合うサイズ、例えばMサイズのNail Polish Letter PaperとLサイズのYamagiwa Letter Paperが全く異なるデザインなのは、そのためです。だから現在の商品ラインナップをご覧になったお客様からは「これ、全部nandakaが作ったんですか」と驚かれることが多いです。

それに対して、最新作のBirds Are DinosaursとGrid #1は、あえて同じコンセプトでサイズ違いを作りました。こちらは不思議とサイズによる印象の差が縮まるため、自分にはちょっと大きいかなと思うサイズにも挑戦してもらいやすいと思います。また私たちのように短いさんと長いさんが一緒に手紙を書くことを楽しむという場合にももってこいで、Birds Are DinosaursのSサイズとLサイズに各自メッセージを書いて一つの封筒に入れて送るといった使い方をよくしています。


Birds Are DinosaursとGrid #1は、nandakaが満を持してお送りするフラッグシップ商品です。これらについては次章でじっくり良いところを紹介します!

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